熊谷さんの名刺には「ソーシャルワーカー」という肩書きが印刷されています。どこかで聞いたような言葉ですが、この肩書きだけで彼女の仕事の全体像を知ることは難しいでしょう。
でも、家庭や学校そして職場において、病気やストレス、人間関係など様々な理由で困っている人、悩んでいる人たちにとって、彼女のような存在は欠かせません。そんな熊谷さんの活動内容と生き方を紹介いたします。
【キタルファ 業務内容】
事務所内相談・心理検査・訪問相談・メンタルフレンド・年金申請等の書類代行・フリースペース・フリースクール・不登校親の会・後援会・講習会・勉強会・法人契約

●不登校・引きこもり・ニートなどの相談相手として●
熊谷さんたちが活動拠点としているのは、岡山県の新倉敷駅近くの事務所です。事務所の名前は「キタルファ(Kitalph)」ちょっと変わった名前ですが、仔馬座という星座にちなんでつけられました。
事務所を開設したのは04年12月のこと。そして06年12月には、NPO法人として登記されました。
キタルファのホームページには、事務所創立の目的がこのように記されています。
「ソーシャルワークと心理カウンセリングの技術を使い、生活上の困難や問題について当事者や関係者と一緒に解決策を考え、より良い生活環境を作ることを目的とします」。
実際にどのような活動をしているかというと、不登校・引きこもり・ニートや家庭内暴力といった問題を抱えている人たちの相談相手になり、解決策を考えていこうというものです。
最近では、高校生の相談にのるスクール・ソーシャルワーカーや企業のメンタルヘルスについてのアドバイザー業務も行うなど活動範囲は広がっています。
●心理カウンセラーとは視点や解決方法が違います●
こうした相談業務で思い浮かぶのは心理カウンセラーの存在です。ソーシャルワーカーとはどう違うのでしょうか。
「たとえばここに不登校の子どもがいるとします。そんな場合、その子の心に注目し、心を変えようとするのが心理カウンセラーです。ところが、ソーシャルワーカーはその子とその子を囲む環境、そこには親や学校もふくまれるのですが、その環境に働きかけて問題解決をはかります。だから視点や解決方法が違うのです」と熊谷さん。
これまで本人自身の問題としてとらえられ対処されてきた問題を、本人だけでなく周辺環境にも働きかけ解決しようというのです。
「しかしそれは『犯人探し』をすることではありません。問題を抱える家庭や組織にはたいていキーパーソンといえる人がいるのですが、その人を責めるのではなく、聞き役、仲介役となって関係者相互のコミュニケーションを促進することで解決へと近付けるのです」と熊谷さんは言います。
●高校時代からの友人の相談相手になる機会が多くて・・・●
ソーシャルワーカーというのは、それ自体は国家資格ではありませんが、熊谷さんの場合、大学の福祉系学科を卒業し「精神保健福祉士」「社会福祉士」という二つの国家資格を取得しています。
しかも、大学時代から訪問カウンセラーとして相談業務にかかわってきました。
「どういうわけか、高校くらいから友人の悩みの相談相手になることがよくあって、私のアドバイスから友人関係を壊すという苦い経験もしました。それで、うまく相談にのれるような人になりたいと、大学では臨床心理の勉強をしたかったのですが、福祉の方へ行きました。同じ相談業務でも、より活動的な仕事がソーシャルワーカーだったのです」
そして大学を卒業してからは病院の精神科のソーシャルワーカーとして、数年間の経験を積んだという事です。

●一人暮らしの部屋がフリースペースのように●
こうした説明を聞くと、ソーシャルワーカーへの道を順調に歩んでこられたようですが、ここまでの道のりは決して平坦なものではありません。
彼女が高校3年生の時進路の事で悩んだ時期もあったそうですか、大学進学を機に親元を少し離れた所に部屋を借り、ひとりで暮すようになりました。
こうして学生生活が始まると、大学生の彼女は、少し年下の高校生や中学生からいろいろな相談を持ちかけられるようになりました。
「その子たちは、学校や家庭にも適応できない、ほかに行き場のないような子どもたちでした。そうした子どもたちの相談にのり、世話をしているうちに、私の部屋がフリースペースのようになってきたのです」
フリースペースというのは、不登校の子ども達を受け入れる場所で、学校の方に規則や勉強でしばりつけず、自由に時間を過ごせる場所です。
現在、熊谷さんが運営する「キタルファ」でも、事務所をフリースペースとして提供しているのですから、このときすでにソーシャルワーカーとして活動していたとおいってもいいでしょう。
●人生を大きく変えた交通事故と友人の死●
そんな熊谷さんの人生を大きく変えるような事故が起こったのは、大学2年の時でした。
熊谷さんの部屋に出入りしていた仲間たち4人で夜のドライブに行き、高速道路で大事故を起こしたのです。2人が亡くなりました。同乗していた熊谷さんは助かりましたが、長期入院を余儀なくされました。
「このとき亡くなった女の子は、とくに仲が良かったのです。その娘もはじめは行き場がなくて私の部屋に出入りしていたのですが、そのころは立ち直っていました。それで『将来は自分のように行き場のない子を受け入れる場所をつくりたい』と言っていました。私もうん一緒につくろうねと二人の夢を語っていたのです。でも、その夜に亡くなってしまったのです・・・」と当時を振り返る熊谷さんの目には涙が光っています。
熊谷さんが「キタルファ」という事務所を立ち上げたのは、自分が納得できる福祉・心理相談活動をしたいという気持ちからですが、その亡くなった娘の遺志を継ぐことでもあったのです。
そして、熊谷さんが入院しているときに交替で見舞いに来てくれた両親の姿を見て「親の愛情の深さや存在のありがたさがよくわかった」と言います。
「親から本当に愛されていると実感することで、そのあと強くもなれたし、親のことも考えるようになりました。また、私の入院を知って、部屋に出入りしていた子やカウンセリングしていた子たちが心配して駆けつけてくれました。両親もその子たちの姿を見て、親もとを離れて娘がやっていたことが間違っていなかったとようやく認めてくれ、これからもあなたのやりたいことを続けなさいと、励ましてくれたのです」
●「キタルファ」の名にこめられた壮大な願い●
熊谷さんによると「キタルファ」は介護保険や成年後見人制度などの公的支援を受けずに経営を成り立たせている全国でも数少ない事務所だそうです。
それだけ熊谷さんたちの活動が利用者から支援されているということで、4人のスタッフが忙しい毎日を送っています。
この事務所の心理カウンセラーとして活躍されている楠木さんに熊谷さんの印象をお聞きしました。
「母性と父性をかねそなえている人で、専門家としても尊敬できます。困っているときは大きな器で受け止めてくれます」とスタッフも厚い信頼を寄せています。
仔馬座にある「キタルファ」という星は、小さくて、目立つ存在ではありません。しかし星言葉では「マクロ的な思考、壮大な世界観」を意味する星です。
この名前には豊かな知識と技術を活用し、広い視野から困っている人、悩んでいる人たちのサポートをしたいという願いが込められているのです。
社会的にはまだまだ知られていないソーシャルワーカーの存在ですが、その役割の重要性はますます高まっていくでしょう。
「最近、子どもが学校へ行きたがらない」「うちの会社は社員が長続きしなくて困る」そんな悩みを抱えている方は、一度相談されてみてはいかがでしょう。
事務所/精神保健福祉士・社会福祉士・心理事務所 Life Consider Center Kitalpha キタルファ
住所/〒710-0252 倉敷市新倉敷駅前3-73-1 2階
TEL&FAX/086-525-2152
業務時間/要TEL確認
担当/熊谷
駐車場/事務所前に有り
定休日/要TEL確認
URL http://www.kitalpha.jp/

















