観光都市として全国的に名高い尾道も、経済活動となると、お隣の福山に遅れをとっているのではなかろうか。そんな尾道にチャレンジ精神にあふれる有望企業がある。その名は【株式会社 京乃】。社名は古風だが、社長の小川喜二郎氏の頭には、斬新でしかもユニークなアイデアがいっぱいのようだ。今回は小川社長に登場していただき、創業当初の話や今後の計画などについてお聞きした。

◆東京でテレビ局に就職、最前線で仕事をする◆
「高校を卒業するまでは卒業するまでは尾道、その後大学は東京の方へ行きました。大学を卒業しても尾道には戻らずテレビ局(TBS)へ就職したのです」と小川社長。
一見したところ普通の青年だが、この人物こそ、わずか6年で株式会社京乃をグループ年商15億円(今年度目標)の企業に育て上げた社長である。現在39歳ということだが、スリムな体つきはもっと若く見える。
「私がテレビ局にいるとき、雲仙普賢岳の火砕流が発生しました。入社間もない私も報道関係者の一員として、現場近くにいました。幸い火砕流には巻き込まれませんでしたが、忘れられない経験です。」
誰もがあこがれるテレビ局。「仕事はハードでしたが、面白かった」と小川社長。
「しかし、ワイドショーを担当するようになって、芸能人のプライバシーをのぞき見するような仕事ばかりが続き、自分のやっていることに疑問を持つようになった」という。
結局、2年ほどでやめる事に。その後はコピーライターの勉強もしたが、バブル崩壊後の不景気な時代、広告の世界にも活躍できる場所は見つからなかった。
しばらくは東京という大都会の中で生き方を模索するような日々を送ることになる。
◆6年前に会社をつくり 最初は葬儀屋から◆
そんな都会暮らしに見切りをつけて、30歳を少し過ぎたころ、故郷の尾道へ帰ってきた。
「帰ってから少しの充電期間がありましたが、このままではいけないと、今、専務をしている友人に声をかけて6年前に会社をつくったのです」。
そこで始めたのが「葬儀屋」。最初は友人と二人で既存の葬儀屋をまわり、その下請けのような仕事からはじめた。
当初は二人ともまったくお金がなかったそうで、一日のうち一食は50円のカップラーメンという日が100日間くらい続いたそうである。
当時のハングリーな暮らしぶりが、その後の飛躍の起爆剤になっているようだ。
◆豪快な食べっぷりが気に入られ、付き合うことに◆
会社は、どうにか仕事を続けていたが業績は思うように伸びない。そこで葬儀のあとに必要となる仏壇や墓石の販売に目をつけたという。
「あちこちの葬儀屋と提携すれば注文もとりやすいだろうと回ったのですが、ぜんぜん相手にしてもらえません。」
そこで小川社長がとった次の行動は・・・。
「ある葬儀屋さんに毎日通ったのです。『何をしにきた』と言われても、気にせず勝手に仕事を手伝いました」。つまり、無報酬覚悟の押しかけアルバイトをしたのである。そんな日が1ヶ月間ほど続いたある日、そこの人に回転寿司を食べに誘われた。
このとき小川社長は無報酬の腹いせでもなかろうが、「空腹だったこともあり、遠慮もせずに高額な皿の寿司ばかりを30皿ほどたいらげた」と言う。
その豪快な食べっぷりに相手はおこるどころか「お前、変っとる」と気に入られ、そこから本気の付き合いが始まったといいます。
「その後、そこの社長の紹介で、大口の取引先を紹介してもらい、仏壇・墓石の本格的な販売ができるようになりました」と当時を振り返る。

◆中国へも単身乗り込み仕入れ先を開拓する◆
目標を決めたらそれに向かってまっしぐらに進むタイプのようだ。墓石の販売を始めたころにも、墓石の本場中国にまで良質の石を求めて旅をした。
「事前にアドバイスしてくれた人はいたのですが、予定通り行かなくて、ひとりで墓石業者を探すことになりmさいた。中国語はできないし、偶然出会った日本語が話せる中国人の情報だけがたよりでした。ちょっと怖い思いもしましたが、その旅がきっかけで良質の石が手に入るようになり、いまも取り引きは続いています。
高校時代はラグビーに夢中になっていたそうだが、ビジネスチャンスというボールを手にしたら、離さずにまっすぐゴールへトライするのが得意なようだ。
◆「つかりゃんせ」は好評で尾道の新名所に・・・◆
株式会社京乃のホームページを見ると、業務内容は左表のようになっている。
これらの事業にどのような関連性があるのか。小川社長も認めるように、行き当たりばったりに拡張してきたようにも見える。しかし最近では、やり方も変わってきた。
「うちには企画戦略室という部署があって、4人の担当者が新規事業の開発を担当しています。『つかりゃんせ』の開発事業などもこのチームがてがけました」。
「つかりゃんせ」というのは、今年6月尾道市平原台にオープンしたスーパー銭湯「尾道湯屋・つかりゃんせ」のことだ。
いまではスーパー銭湯もそれほど珍しくはない。しかし、ここは日本では初めての総木造のスーパー銭湯で、全体に懐かしさを感じさせるレトロ調でまとめられ、癒しと安らぎの空間が創り出されている。
もうひとつの魅力は天然温泉で、地下500mの地層からは高濃度のラドンや温泉成分を含んだ冷泉(実際にはそれを過熱している)が湧き出しており、入浴したらアトピーが治ったという人もいる評判の湯で、いまや尾道の新名所になろうとしている。
◆まず思い込むことが大切。今後は海外へも進出の予定◆
小川社長の座右の銘は『やればできると本当に思う奴が勝つ』という言葉だ。「まず、こうしたいと本気で思いこむことが大切で、あとは努力と運でどうにかなるものです」と屈託ない。そして、『またこの店へきたいな』とお客さんに思っていただくことを目ざした店づくりや接客を心掛けている。
「ぼくは『消費』をどうすれば『投資』に交換できるかということをよく考えます。遊ぶことは『消費』ですが、そこから仕事のアイデアをつかむと『投資』にかわります」。
たえず行動しながら考えるタイプのようで、そんな小川社長の目は、国内だけでなく海外へも向けられている。詳しいことはまだ発表できないが、海外進出も具体的な事業計画に入っていることは確かである。
小川社長がゴールへどんなトライをするか、これからの活躍を見守りたい。

















