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アイメッセージインタビュー
≪ 2006年12月号 ≫アイメッセージインタビュー ~「MONDO CAFE」沖本氏

お客様の声

沖本辰美 氏
Tatumi Okimoto

1983年ブライアンイーノ環境ビデオ【Mistaken Memories】の製作に参加。1984年武蔵美術大学にて【ディートリッヒ・デン・ヴォルゲン】映像音響インスタレーションを主催。
1999~2002年 ドイツの【フリーミュージックプロダクション】との共同制作をライブハウス等で発表するなど国内外で活動する音楽家として知られる。

一見なにげない木造アパート風の古い建築物。その一階の奥まったところにある、ペンキのはげかけたドア。そのドアを開けると、イルミネーションの薄明かりの中に突然、激しい音響の世界がひろがります。
ここが「モンド・カフェ」
福山の音楽好きならまず知らない人はいないといわれるカフェバーです。
このお店のオーナー店長で、音響作家、空間芸術家としても活躍されている沖本辰美さんに建築論、芸術論をお聴きしました。

お客様の声 ♪ただのカフェバーではなくさまざまな文化交流の場に♪

Q この「モンドカフェ」という名前は、どこからきているのですか?

A「モンド」というのはイタリア語で「地球」という意味です。「カフェ」としたのは、単に酒を飲む場所ではなく、いろいろなカルチャーを持つ方が集う、文化交流の場、サロン的な意味合いを持たせたかったからです。
それと、開店した10年ほど前に「モンド・ミュージック」といって、見捨てられた音楽を新しい価値観でとらえなおそうという音楽活動がありました。それに共感したこともあります。

Q お客さんはどのような方が来られるのでしょう?

A 基本的には音楽の好きな方。でも、建築や現代美術が好きというようなお客さんも多いですよ。とにかくクリエィティブなものが好きな人ですね。
求めている音楽も一般的なものではなく、新しい価値観で創る新しい音。それは大量生産、大量販売されるCDのように商業ベースには乗りにくいもので、レコードでしか出回らないような音楽なのです。

Q でも今はCD全盛の時代では?

A いいえ、そんな事はないです。小さなプロダクションでは、資金的にCDは出せないのでレコードで出します。しかもインターネットの時代ですから、たとえ海外のマイナーな音楽家がレコードを出しても流通はできます。商業ベースで出回るCDにはない音の世界があるので、それを紹介したいのです。しかもこの店では、一般のDJが自分のつくった音楽も発表しています。

Q DJというのはどういう人たちですか?

A DJというのはディスクジョッキーといってラジオの音楽番組の司会者のことですが、ここでは別のカテゴリーになっています。要するにその場で音をつくるミュージシャンと同じ様な存在で、もっとそれが器用にできる人なのです。そのためこの店にもレコードのターンテーブルが何台か用意してあります。

♪感心しない日本の屋外看板、店内はあくまでシンプルに♪

Q そうですか。ところではじめてここへ来て驚くのは、地味な2階建ての木造アパートにこんな施設があることです。小さな看板を出してひっそり営業しているという感じですが、これもやはり演出ですか?

A 演出というより、禁欲的なだけです。私が日本の町並みで一番嫌いなのは、景観などまったく無視しんて、派手な看板を出して目立とうとしている点です。金儲けのためならなんでもやる企業精神が看板に象徴されているように思います。そういう考え方は苦手です。だから、店の宣伝などもこれまでやらずにきたし、つくりも地味にして正体不明な感じにしておきたいのです。

Q 店内もこの感じで続けられるのですか?

A いいえ、少しラフすぎるのでもう少しまともにしたい気持ちはありますが、格好をつけるのがいやなのです。格好よくしたいというより、シンプルにしたいのです。たとえば、和風レストランなどで予算がなくて木目調のクロス(壁紙)などを貼って安く仕上げたりしますが、あんなのは嫌いです。それならまだベニヤ板を貼ったほうがいいと思いますね。ベニヤでもいいから本物の木を使いたいです。実際以上に店をよく見せたいという気持ちがないのです。

お客様の声 ♪本物の伝統とは今後も必要とされるものです♪

Q お話しを聴いていますと、建築にも興味をお持ちのようですが

A そうですね。音楽同様に強い関心を持っています。神社、仏閣などの日本古来の建築物からビルや戸建住宅など最新の建築物まで、空間として面白ければいいという考え方です。空間がすきなのです。

Q そんな沖本さんからご覧になって、今の戸建住宅はどうですか。

A 本来の家づくりは、地元の工務店や大工さんが地元の木を使って、地元の気候風土に合わせてつくるものでした。昔から日本人はそうしてきたのですが、いまは流通やコストの点でそれができなくなってきています。それが残念です。地元に根ざした家づくりをすれば、その地方の伝統工法や技術も継承されていくでしょうね。

Q もっと地元の伝統を大切にしようということですね

A そうです。でも、私は古いものは何でも無条件に残すべきだと言っているのではありません。たとえば鞆の浦の街並みなど、残すに値しない部分もありますよ。伝統や歴史的景観を残すのはいいけれど、今の生活に合わないものは伝統とはいえません。本当の伝統とは今後も必要とされるものであって、ただ古いというだけで残すのはどうかと思います。
捨てるべきものは捨てるべきでしょうね。そうでないと、そこに住んでいる人たちがかわいそうです。世界遺産だとか歴史的景観保存地区だとか、よそから来た旅行者のような人間が勝手に祭り上げてしまって、昔からそこに住んできた人たちの日常生活を不自由なものにしていることもあるのです。本当に、そこに住んでいる人間にとって必要なものだけを伝統として残していくべきでしょうね。


♪伝統の継承者には勲章より活躍できる環境づくりを・・・♪

Q ところで、現代の建築家の仕事ぶりを見てどう思われますか?

A 私から見れば、たいした建築家はいない、というのが本音です。私が尊敬できるのは地元の名もない建築家さんで、伝統を残しながら、地元の建材を使って安くていい家を建てようとしている人たちです。そして宮大工のような伝統的な技術を持っている人たちが、もっと現在の家の建築工事にも携わればいいと思います。でもそういった伝統技術を持っている大工さんは、祭り上げられてしまって、勲章などをもらってますます遠い存在になっています。

Q そうですね。評価されるほどに距離が開いていくような気がします

A 人間国宝になったり伝統工芸士としてとして勲章など授与されるということは、その技術の継承者がもうほとんどいないということの裏返しですからね。評価して勲章を授与するのもいいけれど、その人たちが生き残り、活躍できるような環境づくりにもっと配慮するべきでしょうね。


♪美術館に展示してあるものだけが、芸術品ではありません♪

Q 沖本さんは空間芸術のアーティストでもあるわけですが、芸術についての考えをお聞かせください。

A これは、私の持論ですが、芸術も教科書に載ったり学校で教えたりするようになればもうおしまいなのです。芸術なんて、現在でもどんどん新しいものが生まれてきていると思います。ですから、美術館などの展示物も時とともに変わるべきですが、今の美術館は評価の定まったものを並べておくだけのいわば骨董品の展示場と化してしまっています。
 本来の芸術派もっと庶民生活に根ざしたところで生まれ、身近にあるものだと思います。絵画などにしても、室内に飾って毎日眺めてこそ意味があるものです。それがいつの間にか学問の対象になったり、美術館で鑑賞されるだけのものになってしまいました。多くの人が、美術館に展示してある高価な過去のものしか、芸術品としての価値を認めようとしません。でも、私たちの周りには、後世の人が貴重な芸術として評価するようなものが、生まれているかも知れないのです。ですからもっと身近な視点で芸術を見て、楽しむようにしたいですね。

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